TV邦題:美と真実
は、ジョージ・ハーバートの詩、
"Who says that fictions only and false hair become a verse? Is there in truth no beauty?"
(フィクションと付け髪だけが詩になると誰が言っただろうか。真実に美なきや? (こんな感じ?))
より。
上舞です。
ジョン・キーツのBeauty is truth, truth beauty(美は真実、真実は美)が思い起こされますが、「アイザック・ニュートンが虹の原理を解明したことによって虹の美しさが損なわれた」という見解を示したのは彼だったんですね。
これに対しリチャード・ドーキンスが自著「虹の解体(Unweave the Rainbow)」において、キーツに代表される文学者の科学に対する否定的見解に反駁、科学の発展は宇宙に対する"センス・オブ・ワンダー"(驚嘆する精神)を生み、それこそが詩情の源泉となる、と説いているようです。
出たなSense of Wonder。
これこそがSFの真髄であるよなぁ。
ドーキンスは「利己的な遺伝子」、「神は妄想である-宗教との決別」とかを書いた人、読んでないけど書名は有名だよね。
さて本題、このエピソードではメデューサ星人という既知銀河系において高度に思考能力が発達し航宙航法技術にも長けた種族が出てくるんだけど、その形態は人間が直接肉眼で見るとあまりの醜悪さに発狂してしまうという生物、という設定。
そのためメデューサ星人大使は外視から遮られた生息環境維持器に入れられており、付き添いとしてヴァルカンで4年間も修行したテレパスでもある女性心理学博士も同行している。
博士の歓迎会において彼女の名誉をたたえるためスポックがI・D・I・C<無限多様無限結合>メダルを礼装制服に付けて登場してるんだけど、これが出るのはここが初めてじゃないかなぁ。
「この三角形と円―つまり、相異なる形と素材と構造―は、相違しながらも互いに結合して真実もしくは美を創造するあらゆる二立物象を象徴しています」(スポック)
<エンタープライズ>の設計者のひとりが出てきたり、テレパスの他人の感情に対する防衛(憐れみってのが一番たちが悪いらしいですよ)、見るに耐えられないほど醜いのか美しいのかの判断、そしてヴァルカン精神融合技術と銀河系外縁部に存在する航宙艦を寄せ付けない銀河バリア(第一話の設定)の存在とか、シリーズも後半になって多様な設定を上手く使用している。
スポックと精神融合したメデューサ星人大使の台詞で、
「あなたがたが言語と呼ぶこのしろものは―何よりも驚異的だね。このようなものにこれほど多くを依存しているなんて。しかし果たしてあなたがたの中で真にこれをマスターしている人はいるのかな?」
が非常に興味深いですね。
しかしこう激しい憎悪と嫉妬心の物語の結末に、それでも人間の持つ美しさの再生を垣間見させてくれる、いいエピソードであると思いますよ。
「それと、われわれの持つ相違を結合して新しい真実と美の創造を可能にするやりかたも、です」
長寿と繁栄を
I・D・I・C画像提供:北方多聞 |