2010年6月10日木曜日

自費の指名

ま、なんかしようと思ったら自費でやる方が文句が出なくていいよな。



津田です。



宇宙大作戦には様々な異星人とその文明が出てきますが、ネクストジェネレーションで一気に火がついたのがクリンゴン人でしょう。

初出はTV版タイトル「クリンゴン帝国の侵略」でしょうか。原題は「慈悲の使命」。

クリンゴン帝国との和平交渉が決裂した結果、戦略的重要拠点であるオーガニア星を押さえるべく連邦の命を受けたカーク達がクリンゴンと初めて相対するわけです。

戦争に突入した時には第2のアルメニアかベルギーか、とオーガニア星のことを考えるカーク。

カークとスポックは、連邦庇護下に入るようオーガニア代表を説得するものの、歓迎はされるが提案は柔らかく拒絶。

牧歌的生活を営み過去何万年何一つ変化のない停滞した文明のため現状の危機的状況が理解できないのだろうと、オーガニア人達に対し苛立つカークであったが・・・。


このエピソードの凄いところは主人公側いうなれば大国アメリカを批判的に描いているというところであろう。

クリンゴン側の方は自覚して好き勝手やっているのに対し、地球人側の善意の押し付け的なところが実によく皮肉られており、非常に普遍性の高い良質なSFドラマとなっているのだ。

現状の例えば普天間問題などをこうした感じで小品に落とし込める作家が果たして今の日本にいるのだろうか。


またこのエピソードにより限定的な和平に至ったものの争いは絶えなかったクリンゴン帝国とも、オーガニア人が予言したとおり、ついには恒久的な和平を結ぶのである(映画スタートレックVI 未知の世界)。

TV版の「人間は大昔から望まないものを手に入れる技術に長けていますね」というスポックの台詞や、クリンゴン人司令官が一人だけ反抗的なカークに対し「おまえはわたしが理解できる唯一の人間だ」とか言うのが印象的です。


敵役としては非常に愛されたクリンゴンであり、種族設定も深められ言語なども作成され、架空言語としてはISO 639の言語コードがあったりgoogleでは表示言語としてクリンゴン語を選択できるなど破格の扱い。

俺も日本であったワールドコンのクリンゴン語講座に30分ばかり出席してみたことがあるが、英語もわからない頭では理解できるはずもなかった。

そういえばロマンチックではない響きがする「I love you」の言い方調査では、このクリンゴン語「qaparha」を抑え、日本語「私はあなたを愛します」が堂々の1位であったな。

クリンゴンよりロマンチックさに欠ける日本語は使用せず、月が綺麗ですね、とかを使いましょうかね。


小説の最後で和平が成ったことを悲しむクリンゴン司令官コルにカークが理由を尋ねると、かれはため息をついて答えます。

「かれらがわれわれを戦わせてくれなかった、それが残念だといったのだ」

「戦えたら、さぞすばらしかっただろうに」