津田です。
ブライアン・W・オールディス「地球の長い午後」を再読。
二回目にしてようやく全体像と細部が見えてきて、相当に面白かった。
そうさこういうのがSFってもんだ、けど読者にそれなりの力量というかこのVISIONについていけるだけの想像力を要求されているであろうことも確か。
あと登場人物?の行動に感情移入が難しく(退化途上にある人類種のひとつなんで)突き放して読まないとかなりイラっとさせられるであろうことは間違いなかろう。
一応主人公のグレンはましな方。
しかしこの凄まじい情景を良く描き出したなと思う。
忠実に映像化は絶対無かろう(商業的な意味で)が、非常にヌルくそれを造形したのが「風の谷のナウシカ」ともいえるかもしれないだろうが全然全く足元にも及んでいない。
ブライアン・W・オールディス自体はSF史研究でも尽力している人で『十億年の宴SF―その起源と発達』で、
「SFの起源は、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』である」と主張している。
宇宙と人類の運命をまたにかける、軽薄だがアイディア満載で、壮大かつ華麗なSFを「ワイドスクリーン・バロック」と命名し、「SFの中でも、もっとも魅力的な分野である」とも書いた、とか。
マクロス擁護派であるな(笑)。マクロスシリーズはワイドスクリーンバロック、間違いない。
また本書は翻訳もまた見事。
原題は『温室』“Hothouse”だが、本書では日本語としてのすわりを考えてわざわざアメリカ・ペーパーバック版の題名“The Long Afternoon of Earth”を取り訳している(もともと英国作品で短編シリーズだった)。
最近は小説も映画も歌も直訳ばかりならまだしも発音そのままカタカナで表記してあるものが目立つのだが、おいちゃんと仕事しろ。
伊藤典夫や斉藤伯好のような練達が育っていないのだろうか(知らないからいい加減なこと言ってますよ)。
またおそらくクラークの「楽園の泉」、そう軌道エレベーターのアイディアの一端となっているであろうことは想像に難くないと思いますよ。
生物特性のある軌道エレベーター(厳密には違うが)なんて俺が考えるくらいなんでやはり先人が考えていました。
現在出版されているのは表紙がかっこいいのでコレを機会に買おうかな。
(そういえば某会から譲り受けたものだったよコレ。まぁいいよね、答えは聞いてない。)