「はやぶさ、そうまでして君は~生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話」
って本が図書館から借りられてきていたのでせっかくなので読んだ。
上舞です。
あぁ、やっぱ面白かったわ、これ。
プロジェクトリーダー川口淳一郎教授みずから執筆しただけあって、このプロジェクトの全体像が明快にはっきりと見えてくる。機会があればぜひとも読んでみることをお勧めしたい。
前半部のNASAとの確執などまさにプロジェクト誕生秘話。ぐいぐい読ませてくれます。
数々のトラブルを乗り越えてきた経緯はかなり報道もなされていましたので、そんなに目新しい点はないのですがそれでも惹きこまれるっていうのはほんと、フィクションが嫉妬するほどではないかな。
あとやっぱり背筋がゾッとしたのは、通信途絶回復後に「はやぶさ」の状態をチェックした時のくだり。
リチウムイオンバッテリを構成している11個の電池のうち、3個は確実に死亡。
1個は弱っている可能性が高い。
残りの7個は元気に見えるけれども実際のところは不明。
で、この7個の電池は不思議と満充電に近い電圧を示してたんだが、つまり通信途絶時になぜかバッテリの補充電回路がONになっていましたとさ。
非動作状態だと過放電で電池死んじゃうから4個が使い物にならなくなったところで、
「これ以上はまずい。補充電回路をONにしよう」と
「はやぶさ」が勝手にONにして7個の電池を生かしておいてくれたってわけ。
川口淳一郎教授いわく
「プログラムのどこにも書き込まれていなかった」
「『はやぷさ』が自分の意思で、危機を回避するために補充電回路をONにした?それは、科学の原理としてあり得ない」
まてまてまてーい!
フィクションでのご都合主義をもあっさりと超える事態。
「はやぶさ」…恐ろしい子!
まほろばに 身を挺してや 宙(そら)纏う 産(うぶ)の形見に 未来必ず
あの時、「はやぶさ」は本当に生きていたんだと思う。
ヒトは一人では人間を形成しえず、二人以上で人間を形成しうる。という意識を持つ私たち。
「はやぶさ」はけっしてヒトではなかったのだが、多くの人の想いを受け、人間にはなれたのかもしれない。
いい本読んだ。
しかしそう、この本の物語はここでは終わらない。
現在もリアルタイムで動いているのです。
(大人の超合金でも出るしな)
「はやぶさ」は精一杯“生きて”、そして“死んだ”。
だからこそ、生命を持ったといっていい。
そしてその血脈たる残した次世代の卵は、脈々と今まさに育まれているのだから。