2010年10月27日水曜日

ザ・ケイジ、といってもニコラスじゃないよ

時には医者よりバーテンの方が話をしやすい -ドクター・ボイス-



津田です。



二つある宇宙大作戦のパイロット版の最初の方、"The Cage"(邦題:「歪んだ楽園」)は一部が"The Menagerie"(邦題:「タロス星の幻怪人」)に過去話として取り入れられ、TOSでは例外的に前後編の2話完結で放映された。
小説版「実験動物園」には、TV放映版の二重プロットがわかりにくくこの構成は間違いだったんじゃなかろうか、ってノベライズ書いたジェイムズ・ブリッシュの前置きがあるのが興味深い。
なんで小説はメインストーリーの方だけ書くよ!ってことなんで、タイトルは"The Menagerie"になってるけど実際にはパイロット版の"The Cage"のノベライズってことになる。
あれっ、ということは「タロス星の幻怪人」は唯一小説版がないってことかな、後で調べよう。

映像は地味ながらもワープ7でタロス星群へ向かう時の効果はなかなかいいと思った。
上陸班は上着を着用するとことかはリアリティがあるのに本編では採用されなかったんだな。
しかし実はここら辺とかクルー構成の一部はTNGに受け継がれている箇所も見出すことができ、面白い。副長で操舵手でもある女性士官がナンバーワンと呼ばれてるとことか。
タロス星人は強力なテレパシーによって、対象の記憶からリアルなイメージを再現できるのであるが、このアイディアをTNGではテクノロジーによってホロデッキとして再現していることとかはかなり注目に値することなのではあるまいか。
ヒロインであるビーナ(小説ではヴィナ)は幻影ではなく本当に遭難者の生き残りなんだけど、タロス星人の力により「あなたの望む服を着るわよ、姿も変える」ときたもんだ。それなんて(以下略)。
こうも言う「でも幻影は麻薬と同じ、落とし穴だった。夢が現実より重要になると無気力になっていくの」
痛っ耳が痛ッ。
そうそうライジェルって星系はスタトレでよく出てくるけどなんのことはない、リゲルだ。

この話、科学士官としてヴァルカン人スポックは登場している(まだ設定がしっかりしてないのか笑うスポックが違和感ありすぎで気味が悪い)けど、まだカークが船長ではなく前任のパイク船長のエピソードとなっている。
タロス星人の幻影のひとつでパイクの故郷の風景を見せられるくだりは、映画ジェネレーションズでネクサスに捕らえられ心安らかに過ごしていたカーク船長を思い起こさずにはいられず思わず目頭が熱くなる。

人が一番強く夢見るのは自分にできない事

しかしこれ、当時のパイロットフィルムとしては地味であまりにも哲学的に過ぎるだろ。
(1965年製作、1966年第24回世界SF大会でも上映された)
SFとして非常に優れていることはTV放映版がヒューゴー賞を獲得していることからもわかるけど、相当に時代を先取りしすぎていたんだろうと思う。
今の目で見る方が面白さをより感じる、ロッデンベリーすごいな。

与えられた人生には正面から立ち向かうべきだ

ラストも切ない。敵役も単なる悪役ではないのだ。
「彼女は幻を、君は現実を得た。快適な航行を祈る」

まぁTV版はちょっぴり笑いを誘って終わるんだけどな。
「船医ってのは嫌な年寄りばかりだ」

長くなったけど最後にブリッシュのあとがきの一部を載せておく。

本来、作家は自分の持つ技術的な問題を読者に押しつけるべきではない。読者は、そのような問題は作品が発表される前に解決されるべきだと主張する権利を持っているからだ。