上舞です。
志賀島で発見されたアノ金印のホンモノが展示されていることでも有名な福岡市博物館の特別企画展で、6月20日(日)まで開催中。
先住民の言葉で「月の神殿」を意味する“シカン”と、この文化を名付けたのは島田泉考古学教授(南イリノイ大学)、ロマンチックですね。
インカ、マヤ、アステカといったよく知られている中南米の文化と違って全然聞いたことないなーとか思ってたんですが、いやはやどうして、かなりの量と質の展示物で素晴らしかったですよ。
一番の売りであろう「シカン黄金製大仮面」はそれほどでもないだろうと思っていたらほんとにでかくてびっくりした。
死者が仮面を被ることにより神へと変身出来ると考えられていたようなんですが、今も昔も仮面好きだねぇ(ライダー)。
これまでインカのものと考えられてきた特徴的なつりあがったアーモンド・アイ(ダイヤはアラビア)と呼ばれる目の装飾をもつ金製品は、このシカンの地にルーツがあると島田教授は確信してるらしい。
ツリ目ファンとして興味深いですな(そこですか)。
また映像展示も多いのでじっくり時間をとって観賞されることをオススメ。
最後の3Dシアターナチュラル(ナチュラル?)も結構見ごたえがありますぞ。
しかしこのシカン文明、彫金など金属加工での技術輸出産業が盛んだったようで、貿易や長大な灌漑用水路建設などもあり食生活はかなり豊かだったことがうかがえるらしいです。
他民族に関してもその文化的特長を残した土器などが出土しているところから、かなり寛容であったようにも推察されるとか。
そうそう、実験考古学で土器の製法や青銅の精錬を再現しているのがあり、それぞれの道の専門家や現地の人々の協力を経てこそ、このような偉大な成果を成し得るのだというところもクローズアップされている点が非常に好感の持てて感心しました。
あとショップにはなぜかキティがコラボってたりするんだがまぁそれは置いといて、オフィシャル・ガイドブック「古代アンデス文明を楽しもう」(1000円)がマジお勧め。
子供向けのようだがかなり詳しくしかも簡潔にまとめられていて、シカンだけでなくカラル・ナスカ・モチェ・チムー・チャビン・ティワナク・ワリ・インカに関しても言及がある。
プロローグの初っ端から「今から500年前、キムチで有名な韓国料理はぜんぜん辛くありませんでした。」とか書いてあるし。
←オマケのシール付き。
さて、墓の主が女性という珍しい発掘品も見ることができるのですが、女性と判明した一つの要素に銀製の胸当てがあったとのこと。
インカでは月の涙とも称された銀、黄金は太陽の汗と称されていました。
神林長平「太陽の汗」は時々読み返したくなる私の中では好きな一冊。
この作中に出てくる世界通信社の情報収集機械ウィンカとかのガジェットは、Googleのストリートビューが話題になるたびに思い起こされます。
太陽と月。
対になる当たり前過ぎて普段は意識しない存在も、たまにはこうして想ってみるのもいかがでしょうか。