麗しの北方。
美術関連に興味がある人はもちろん、模型好きなら十二分に行く価値はありましてよ、300円だし。
なんか流れで作家さんのひとり廣田洋子先生と喋ったんだがいろいろ興味深いお話を伺えた。
赤、黄、緑をはじめ華麗な色彩表現を特色とした香川漆芸特有の彫漆という技法は、100回塗ってやっと3mmの厚さになるという色漆を何層にも塗り重ね、文様を彫刻刀で彫り、研ぎ出すことによって生み出される色彩豊かな模様が美しい清緻な難易度の高い技法。
漆はウルシオールを主成分とする天然樹脂塗料で、熱・湿気・酸・アルカリにも強いが紫外線で劣化、長期間極度乾燥状態には弱い性質をもつ。
硬化は乾燥ではなく酵素酸化という反応によるもので、ある程度の温度と湿度が必要という、溶剤を必要とする塗料とは全く違う過程を経る。
なので吹き付け塗装は無理だけど完全硬化後は人体に無害だし、腐敗防止(例:即身仏)や防虫の効果もあるという塗料としては最高品質を持つんだけど如何せん値が張るんだろうなぁ。
間違ってもプラモに塗りたいとかそんなレベルじゃないと思うし。
漆器と聞くと芯材(素地)はもっぱら木だろうと勝手に思ってたが、今回の展示物の多くは布(麻)を使用しているらしく、そんな使い方も出来るのだなと驚いたり。
印象に残ったのは、「色には重さがある」という言葉。
ここでいうのは色の心理効果としての感じではなく、実際の重量のこと。
色漆には顔料を加えるため、確かに顔料材ごとの重さが加わるのは当たり前なのだが、面白く感じられた。
え~っと白が一番重いって言ってたかな(うろ覚えかよ)。
心理効果とは逆なんだなぁ。
彫漆という馴染みの薄い分野でしたが、漆という興味深い素材を考えるきっかけになりましたよ。
そういえば太刀目盛りという独特な伝統的手法で碁盤上に線を引く時の素材には、黒漆を使用するようです。
時と空間を封じ込めた四角い宇宙の座標としても使われる漆、伝統の中にも新しい考えや末来を見出すことは可能だと思えるのですよ。